精神障害

退院請求したら退院できるのか?

これまで退院請求の方法や、精神医療審査会の歴史をご説明してきました。

今回は、退院請求をすることで、「本当に退院ができるのか?」ということについてご説明したいと思います。

厚生労働省が公表している精神行政報告例によると、平成30年度における退院請求の審査件数は2696件となっている。そして、審査に付された請求の約5.8%において、退院が認められる、もしくは措置入院の解除が認められるという結果になった。

この数値を高いとみるか、低いとみるかはそれぞれの立場によって異なってくると考えられる。医療側からすれば、外部機関から退院を命じられるという体験は、全体の5.8%であったとしても不名誉なことかもしれない。

もしくは、人権派の弁護士からすれば、もっともっと退院できる患者が本当は存在するはずであると、主張するかもしれない。

患者からすれば、5.8%という壁はかなり高いだろうし、入院継続を希望している家族からすれば、5.8%の確率で患者が自宅に帰ってくるということは不安を高める要因となるかもしれない。

このように数値だけを見て、それを高い低い、良い悪いと判断することはできないが、退院が認められる割合の地域差に注目すると、また別の視点が見えてくる。以下は、都道府県別に、退院請求の何%に、退院が認められたかを示すグラフである。

なお、掲載のない都道府県については、1件も退院が認められなかったことが報告されている。

全国平均と比べ、かなり高い数値のところもあれば、退院が認められることがほとんどない、もしくは全くない地域も存在することがわかる。

しかし、この結果が一概にその地域の人権意識を反映していると決めつけることもできない。この結果に関わるいくつかの要素はあるのだが、ここでは社会的入院を例に考える。社会的入院患者の場合、退院請求をすれば、体調的には退院ができるのではないかという議論になると考えられる。受け皿が豊富な地域であれば、そこで退院を認めるという決定を下すことは比較的容易かもしれない。しかし、施設はありません、グループホームは空いていません、家族は引き受けません、一人暮らしをするにも本人がヘルパーや訪問看護の受け入れを拒否しています、退院後、通院する手段がありません、ということがあれば、現実的には退院は難しい。

そう考えると、その地域の経済性や福祉的環境、交通の便等が、退院ができるかできないかの判断に影響を与える。本来、審査会のあり方としてそういったことは望ましくないのかもしれないが、現実的に退院先がない患者の退院を認めるということが、果たして誰のためになるのかということは必ず考えなければならない。

そういった事情もあり、どういう請求内容で、どういう体調なら退院が認めらるのかといったことは、一律に示すことはできない。

しかし、退院請求は結果がどうであれ、退院に向かって歩みだす一歩には必ずなると思っている。現時点で退院が認められなかったとしても、退院をするために何が必要なのか?が見えてくることが多いような印象があるからである。

数値だけ見れば、退院請求が直接的に退院に結びつくとは言い難い状況である。しかし、請求を通して、何かしらの変化や前進があるということは多々ある。退院を希望する方々が退院請求を利用し、退院したい希望を主張し、それについて議論をする。そういった機会が今後さらに増えていくよう、支援者は取り組んでいかなければならない。

Oisix(おいしっくす)